■ ALTEC 604-8K & 山本音響工藝社BX280 ■

アルテック社は元々、Westan Electric社との関係が深い会社で、その技術サービス部門のエレクトリカル・リサーチ・ プロダクト・コーポレイテッド(ERPI)が独立して、オール・テクニカル・プロダクツ社が誕生し、後にアルテック・シア ター・サービス社と改称します。 アルテック・シアター・サービス社は1927年設立のランシング・マニュファクチュアリング社を買収、1941年、アルテッ ク・ランシング社が誕生します。この時、ランシングは技術担当副社長に就任します。このアルテック・ランシング社で、 ランシングは後世に残る名ユニット、802ドライバー、604フルレンジ、515ウーハー等を開発。A-7,A-5等のThe Voice Of Theaterシリーズの開発にも関与していたと言われています。しかしランシングは5年間在籍したのみで、JBL社を 設立、独立していきます。

WEの設備を譲り受けたアルテックは、1949年よりWEのアンプやスピーカーの製造を開始、1950年代に入りますと、ア ルテックは劇場用システムを本格的に開発するようになります。

さて、1944年に産声を上げたALTEC 604ですが、A7,A5などが映画館用として使用されたのに対して、604シリーズは 「スタジオモニター」として、フロアー型の620シリーズ、よりコンパクトな612シリーズに搭載。1975年には604-8G のモデルが発売され、620Aエンクロージャーに搭載されます。また、604-8Kなどにも搭載されている「マンタレーホーン」 が1978年に開発、1979年604-8Hに使用され、少しずつですが改良されて現在に至っているのがわかります。
604-8Kを搭載したスピーカーシステムとしては、比較的コンパクトで巾が狭い、Milestone 604のモデルが1996年に 発売されましたが、そのユニット生産打ち切りと共に、604シリーズは幕を閉じました。

しかし、兵庫の山本音響工藝社によりエンクロージャーBX280に604-8Kを納めたスピーカーシステムが発表になり、 一般的には一回り小さい、角形ダクトのある、BX170に納めたものが有名ですが、さすがは大容量エンクロージャー。 比較してみると、鳴りっぷりの違いは明かです。特にエンクロージャーの大型化による低域再生能の改善は目を見張るもの があり、100dB/W/mの圧倒的な能率の良さで、300Bシングルアンプをはじめとする、小出力アンプが増えてきた現在、 再び注目をあびている様です。
ユニットは最近まで生産されていただけあって、ヴィンテージ・オーディオショップでなくても、比較的探せばみつかる 様です。

オリジナルの銀箱や620Jエンクロージャーに入った620 Monitorと比較してこの山本音響工藝社のエンクロージャーの 特徴は、ネットワークをシンプル化したのも効いたのか、とにかく明るく、伸びやかによく響きます。 ジャズばかりでなく、クラシック音楽も存分に楽しむことが出来るシステムです。

私は職場で仕事中のBGMはBOSE111TRで、お客さんが来た時などはアルテックで音楽を鳴らし分け ています。

ともすると古いアンプで鳴らしがちですが、確かに古のMcIntosh C22&MC240で鳴らすと、古いジャズなどにはうってつけ かも知れません。でも私はあえて、CDをメインとした現在作られているアンプを使っています。
実際、C22&MC240の組み合わせは素晴らしかったのですが、せっかく山本音響工藝社のネットワークとワイ ヤリングで分解能も桁外れに上がって、CDなどもバリバリかけられるシステムとなっているのに、それを生か さないテはありません。

そういう訳で私はエアー・タイト(A&M)のATM300を使っています。
力強さ、鳴りっぷりの良さに加えて、みずみずしく3極管ならではの分解の良さを引き出しつつ、出力の小ささ を補ってくれるこの組み合わせは、今までのどんな組み合わせより、より「楠らしい」サウンドに仕上がってい ると思います。


桜の集成材を使用し、ウレタン塗装による、「お金のかかったスピーカー」です。
ダクトは組み合わせるスピーカーによって、選ぶことが出来ます。

ちょっと条件は悪いのですが、職場ではフロントの上にちょうど2階の高さから待合室を 見下ろすような感じでセッティングしています。

エンクロージャーの内部です。
金色に光っているのは、ネットワーク。
ちなみにエンクロージャーは逆さまにしています。

取り付け孔から、拡大して中を見た写真です。
内部配線ケーブルは6N無酸素銅単線です。
吸音材をまったく使用していないのも特徴!

ユニットの拡大です。
604シリーズでも8Gとの大きな違いは、ツィー
ターのマンタレー・ホーンと、アルニコからフェ
ライトマグネットに変更になった点です。

ダクトは交換やオーダーメードが可能です。

スピーカーのボイスコイル。
非常に軽いのが印象的。

ボイスコイルを飛ばすと、こういうふうに黒くなってしまいます(^^;

エアー・タイト(A&M)のATM300。
300Bシングルアンプです。たった8Wの出力ですが、存分に鳴らしてくれます。
ちなみにソースはSTUDER D730をダイレクト接続しています。

ダイレクト接続しているSTUDER D730です。
なぜ、A730も持っていて、D730なのか?
そのあたりの詳しいことは、「銘機礼賛」のSTUDERの項をご覧下さい。
「使いこなし方」のページにも詳細を載せております。


Last update May.31.2001